2016年03月31日
神に見捨てられ、寄る
この世の誕生にさいし、まず七人の神々は闇の中から世界をつくりだし、次いで獣と鳥、爬虫類と魚、そして最後に人間を生ぜしめた。
さて、天界にはウルという名の霊魂が存在し、かれだけはこの創造に加わらなかった。かれがその力と知力を出し惜しんだために、創造
されたものの多くは欠点を持ち、完壁とは言いかねた。体裁が悪く、目を覆いたくなるようなものも決して少なくなかった。年若の神々は
、創造したものをもとに戻し、この世を美しいものだけで埋めたいと願った。
だが、ウルは「自分たちが造り出したものを抹消してはならぬ」と言って片手を突き出し、かれらを押し止めた。「おまえたちは気晴ら
しや慰めとなる世界を造りたいがために、天空の秩序と平和をきれぎれに引き裂いたのだ。よいか、自分たちの造ったものがどんなに奇怪
なものであろうと、おまえたちは愚かなふるまいの戒めとして甘んじて我慢しなければならぬ。おまえたちの造ったもののたとえひとつで
も破壊されるようなことがあれば、そのときはすべてのものが無に帰するであろう」
年若の神々はウルにひどく腹をたてた。そこでかれらは自分たちが造った奇怪な生き物や体裁の悪い生き物に向かって言った。「ウルの
ところへ行って、かれを神とせよ」それから神々は人間の種族の中から、それぞれ自分の好きな民を選んだ。そして神を持てない民があと
に残ったとき、年若の神々はかれらを前に押しやって言った。「ウルのところへ行け。かれらがおまえたちの神になってくれるであろう」
だが、ウルは口を閉ざしたままだった。
〈神なき民〉は、聞くものとていない西部の荒れ果てた原野で神の名を叫びつづけ、そのあいだに長く苛酷な年月が過ぎていった。
やがて群衆の中から、正義と徳をそなえたゴリムという名の男があらわれた。かれは目の前に群衆を集め、こう説いた。「このままでは
、われわれは放浪の苦しみから木の葉のように萎れ、枯れ果ててしまう。子供と老人はすぐにも命を落とすだろう。死ぬのはひとりでじゅ
うぶんだ。だから、おまえたちはこの平野で休んでいてほしい。ウルという名の神はわたしが捜そう。そうすれば、われわれはその神を崇
拝し、この世で安住の地を得ることができるのだ」
それから二十年、ゴリムはウルを捜しつづけたが、望みはむくわれなかった。さらに数年が過ぎるうちにかれの髪は白く染まり、ついに
神を捜すことにも疲れてしまった。やけになったかれは、ある高い山の頂上にのぼり、空に向かって声をかぎりに叫んだ。「もうまっぴら
だ! 捜すのはやめた。神々はわれわれをだましたのだ。この世はしょせんむなしい荒野ではないか。ウルの神などどこにもいない。苦し
みばかりの呪われた人生など、もうまっぴらだ」
ウルの神はこの言葉を聞いて、かれに言った。「なぜわたしに腹を立てているのだ、ゴリム? おまえたちを造ったのも、見捨てたのも
、わたしではないのだぞ」
畏敬の念にうたれたゴリムはその場に平伏した。すると、ウルがふたたびかれに声をかけた。
「立て、ゴリム。わたしはおまえの神ではない」
ゴリムは立ち上がらずに叫んだ。「おお、神よ。辺がないために茨の道を歩まされている人々がいるのです。どう
かあなたの民から目をそむけないでください」
「立て、ゴリム」ウルは繰り返し言った。「そしてここから去るのだ。泣きごとなど聞きたくない。神ならべつの場所で捜すがいい。わた
しの平安を乱すのはやめよ」
ゴリムはそれでも立ち上がらなかった。「おお、神よ、わたしは去りません。人々は飢えと渇きに苦しんでいます。あなたの祝福と安住
の地を求めているのです」
さて、天界にはウルという名の霊魂が存在し、かれだけはこの創造に加わらなかった。かれがその力と知力を出し惜しんだために、創造
されたものの多くは欠点を持ち、完壁とは言いかねた。体裁が悪く、目を覆いたくなるようなものも決して少なくなかった。年若の神々は
、創造したものをもとに戻し、この世を美しいものだけで埋めたいと願った。
だが、ウルは「自分たちが造り出したものを抹消してはならぬ」と言って片手を突き出し、かれらを押し止めた。「おまえたちは気晴ら
しや慰めとなる世界を造りたいがために、天空の秩序と平和をきれぎれに引き裂いたのだ。よいか、自分たちの造ったものがどんなに奇怪
なものであろうと、おまえたちは愚かなふるまいの戒めとして甘んじて我慢しなければならぬ。おまえたちの造ったもののたとえひとつで
も破壊されるようなことがあれば、そのときはすべてのものが無に帰するであろう」
年若の神々はウルにひどく腹をたてた。そこでかれらは自分たちが造った奇怪な生き物や体裁の悪い生き物に向かって言った。「ウルの
ところへ行って、かれを神とせよ」それから神々は人間の種族の中から、それぞれ自分の好きな民を選んだ。そして神を持てない民があと
に残ったとき、年若の神々はかれらを前に押しやって言った。「ウルのところへ行け。かれらがおまえたちの神になってくれるであろう」
だが、ウルは口を閉ざしたままだった。
〈神なき民〉は、聞くものとていない西部の荒れ果てた原野で神の名を叫びつづけ、そのあいだに長く苛酷な年月が過ぎていった。
やがて群衆の中から、正義と徳をそなえたゴリムという名の男があらわれた。かれは目の前に群衆を集め、こう説いた。「このままでは
、われわれは放浪の苦しみから木の葉のように萎れ、枯れ果ててしまう。子供と老人はすぐにも命を落とすだろう。死ぬのはひとりでじゅ
うぶんだ。だから、おまえたちはこの平野で休んでいてほしい。ウルという名の神はわたしが捜そう。そうすれば、われわれはその神を崇
拝し、この世で安住の地を得ることができるのだ」
それから二十年、ゴリムはウルを捜しつづけたが、望みはむくわれなかった。さらに数年が過ぎるうちにかれの髪は白く染まり、ついに
神を捜すことにも疲れてしまった。やけになったかれは、ある高い山の頂上にのぼり、空に向かって声をかぎりに叫んだ。「もうまっぴら
だ! 捜すのはやめた。神々はわれわれをだましたのだ。この世はしょせんむなしい荒野ではないか。ウルの神などどこにもいない。苦し
みばかりの呪われた人生など、もうまっぴらだ」
ウルの神はこの言葉を聞いて、かれに言った。「なぜわたしに腹を立てているのだ、ゴリム? おまえたちを造ったのも、見捨てたのも
、わたしではないのだぞ」
畏敬の念にうたれたゴリムはその場に平伏した。すると、ウルがふたたびかれに声をかけた。
「立て、ゴリム。わたしはおまえの神ではない」
ゴリムは立ち上がらずに叫んだ。「おお、神よ。辺がないために茨の道を歩まされている人々がいるのです。どう
かあなたの民から目をそむけないでください」
「立て、ゴリム」ウルは繰り返し言った。「そしてここから去るのだ。泣きごとなど聞きたくない。神ならべつの場所で捜すがいい。わた
しの平安を乱すのはやめよ」
ゴリムはそれでも立ち上がらなかった。「おお、神よ、わたしは去りません。人々は飢えと渇きに苦しんでいます。あなたの祝福と安住
の地を求めているのです」
Posted by yyyyyyy6 at
15:28
│Comments(0)
2016年03月17日
でうちでは皆に愛さ
モニカさん、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれないが住所不定の
本名を明かさない浮浪者のおばあちゃんだ。言葉の端々からおそらく
不法滞在者のようだ。職業(と言えるのか?)は空き瓶回収業だと
つい先日聞いた。妙なご縁でなんと彼女はうちの患者さんとして
居ついてしまった!彼女は3ヶ月に一度ほどのペースでふらりとやってくる。
少しずつお金を貯めて鍼の料金に達したら治療を受けに来るらしい。
それが礼儀だと考えているらしく、必ず綾ちゃんに3ユーロほどの
チップをはずんでくれる。要らないと言ってもどうしても受け取って
欲しいと譲らない。彼女の天梭男士手表哪款好治療は必ずドクターが全て一人で行うのに。
いつぞやは綾ちゃんがふとモニカさんを後ろから覗いたら薄いズボンが
ぱっくりと5センチ四方位に穴が空いていてこりゃあ大変だと思って
慌ててうちの余っている作業着をあげた。たまたまドクターがサイズを
間違えて買ってきたやつがあって誰も着ないので持て余していたズボンだ。
彼女にも(というかおそらく負い目があるからこそ)プライドがあるらしく
最初は施しを受けるのをものすごく嫌がったが結局受け取った。
ただし彼女はとても穏やかな人好きのする性格でうちでは皆に愛されている。
身なりはみすぼらしくてもおそらくかなり気を遣っているらしく身体は
清潔に保っている。ちっとも臭くないし服だって靴だって汚れてはいない。
これも気を遣ってかドクターがどんなに勧めても決して食べ物を口に
しないしお茶も飲まない。いや、「施し」じゃなくって本当にただうちの
ドクターは他人にあれ食えこれ食えというのが好きなだけなんだけどね。
経済的に負い目のない人たちは何のわだかまりもなく「じゃ、ごちに
なりやす」てな具合なんだけどモニカさんとZおばあちゃんは決して
何も口にしない。ここら辺はものすごく似ている。
でも二人を見比べると明らかだ。どう見てもZおばあちゃんの方が
圧倒的勝利で浮浪者に見える。彼女が待合室にいると他の患者さんが
「引いて」いるのがわかるもん。